中山園芸さん
中山園芸の中山さんはハボタン「マジックロード」や「ウォーターリリー」など数多くの品種を育種し、かつてお正月の飾りものとして用途が限定されていたハボタンに対してユニークで新しい楽しみ方を提案してきました。
中山さんが育種を始めた当時は兵庫県にハボタンの産地はなく、現在のようなそろいのよい品種もありませんでした。当社が当時販売していた固定種「パラマウント」が切れ葉から丸葉、ウエーブまでさまざまな葉形が発現する様子を見て、そこから切れ葉の細かい株を選抜することでハボタンの育種を始めたと言います。求めた性質を安定化させて1つの品種を作るのには6年～10年の長い年月がかかりますが、ハボタンが持つ色、高さ、葉の形などの豊富なバリエーションと、毎年さまざまな性質の個体が出現し、それらを自分で改良できる面白みに魅了され、根気よく育種を続けてこられたそうです。
中山さんの育種した「キャンドル」「ウォーターリリー」「マジックロード」などの個性豊かな品種と複数本植えなどの新たな楽しみ方の提案を皮切りに、兵庫県の個人育種ハボタンは盛り上がりを見せています。生産者の方々同士の密接なつながりにより中山さんの栽培技術が伝わっていき、兵庫県加西市全体でハボタンの生産と育種が活発になりました。
コロナウイルスの流行により一時的に見合わせましたが、それまでは毎年ハボタンの生産の合間にコロンビアやパプアニューギニア、タスマニアなど世界各国に足を運び、各地で見られる植物の原種を探していたと言い、中山さんの草花に対する好奇心の強さが垣間見られます。
中山園芸さんのハボタン「マジックロード」
葉脈の美しさや絶妙な色合い、そして高さにもこだわったハボタン「マジックロード」をぜひお楽しみください。
Hanayoshiさん
Hanayoshiの大塩さんも、中山さんとともに兵庫県のハボタンマーケットを盛り上げてきた一人です。
大塩さんは脱サラして26歳で農地を持って新規就農し、春はペチュニア、秋はハボタンを中心に栽培してきました。生計を立てるためさまざまな品目に挑戦しましたが、市場では相手にされず数年間は多額の借金を抱えていたと言います。就農して2～3年がたったある日、奇形の照り葉のハボタンが1株でたのが気になって試しに交配してみたとのこと。大塩さんはすっかり忘れていたそうですが、交配してできたその種莢をお母さまが取っておき、まいてくれたのが育種のスタートだったそうです。
5年ほど選抜を続けて照り葉の割合を増やして売ったところ、市場でトラックの荷受けの段階で売り切れるほどの反響があり、「人生が変わった」と大塩さんは語ります。このハボタン「光子®」の名前はお母さまから取り、種を取ってまいてくれた感謝と、ちょうど葉が照って光っている様子から名付けたそうです。
大塩さんはご自身が育種したオリジナル品種の価値を安易に下げることがないよう、当時の相場を上回る価格で販売に踏み切りました。周囲からの反対を強く受けましたが結果的に買い手は減らず、それ以降生産者がオリジナルの品種に対して相応の値段をつけることで産地のブランド化につながっていきました。大塩さんは、こうして価値の高いハボタンの品種を相応の値段で販売できる環境になったこと、またそれが産地のブランド化につながったことは、兵庫県にとって大きな貢献となったのではないかと語ります。
Hanayoshi 大塩さんのハボタン「光子® ロイヤル」
年末の花が少ない時期に花壇を彩る貴重なハボタンを、葉の美しい光沢とともにぜひお楽しみください。