vol.2 定番品目を持つ

vol.2 定番品目を持つ

就農にあたっても、就農してからも、どの作物を栽培したらよいか悩む方は多いはず。

人気の品種?珍しい品種?など・・・、どのように選べばよいか江守さんにポイントを伺いました。

目次

ニーズに応じた商品作り

―― 江守さんは年間21品目53品種を栽培。夏はナスを6種類、冬はキャベツ、ブロッコリー、ダイコン等を栽培しています。

 

「ダイコンは変わり種を作ることを売りにしていますよ。きっかけは家庭園芸に載っていたミニダイコンの記事でした。」

 

―― この記事をきっかけに、江守さんは複数のミニダイコンを作り、その結果「いまここファーム(江守さんの農園)」はカラフルなダイコンという印象がつきました。

 

マルシェでは、1本250円のばら売り、7種類ほどを葉付きで販売しました。皆さん3種買いとか、キリよく1000円で4本買ってくださる方もいましたね。

カラフルなダイコンを積み上げるという見せ方をしたらすごく好評だったんです。

また、それぞれの特長を伝えながら売ることも意識して、カタログの紙面を切り抜いてパウチしたり、その下に値札を付ける工夫もしました。品種の違いはキャッチコピーとかを見てもらえれば分かるよということで。

江守さん収穫のカラフルダイコン
積み上げて売る様子
ダイコンの絵袋
お客さんからは「どう違うの?」って聞かれることが多いです。この品種はサラダ向きで、こっちは漬物にすると色がきれいでとか、そういう風に伝えるととても食いついてもらえます。たとえば『紅くるり』は知らなかったりもするんですけど、紅芯大根だと野菜好きの方は皆さん知ってるんですよ。あと、実は特徴を伝えづらい『ころっ娘』を売るのに一番苦戦しましたね。それなら大きい『冬自慢』でいいやってなるんです。でも、『ころっ娘』は食べ切りサイズなのでフードロスを意識されている方とか、一人暮らしで必要な分だけ欲しいという方には需要がありますね。だから、直売所に置いておくといつの間にか売れています。マルシェでは、イベント的な気分で来ている人が多いので、そういう場所ではカラフルな野菜に人気があります。そういう売り場や客層を想定しながら栽培する品目を決めて、売り方を決めて、といったことが必要かなと思います。

―― 種類に幅があると、野菜を選ぶ楽しさや喜びも提供でき、個別のニーズにも応えやすくなるんですね。

販売するフィールドに合わせた商品を作って、使い分けるのがおすすめなのですね。

 

📚江守さんが試した「ミニダイコン」の記事を読む

定番品目を持つ

―― 消費者のニーズを考える一方、安定した売り上げを得るには自分の軸になる定番品目を持つことがおすすめとのこと。

 

「要素としては二つ。栽培と販売の面から、自分の中で定番品目を持つことをおすすめします。」

 

栽培面では、この品目を自分の軸にしようと決めたら、その品目の中で定番の品種から育ててみることがおすすめです。定番品種なら、あらゆる媒体で栽培方法が発信されていることが多いので、栽培方法の基本を確立できます。

まずは定番品種でその野菜の栽培方法を覚えることが、おいおいバラエティー(変わり種)を増やすことにつながります。

変わった品種でも、作り方は定番品種と大きく変わらないですからね。基本を知ることが成功の秘訣です。定番品種なら、周りに栽培している人が多いと思いますので、先輩農家に指導いただいたり、コツを教えてもらいやすいという利点もあります。

販売面でみると、バラエティー感を出すことも大事ではあるんですが、とはいえ、定番品種を求める人の方が多いです。販路によっては、スーパーのように定番を出荷してほしいというお店もあったりします。そのため、自分がもっている販路を見極めながら、定番とバラエティのバランスを考えていくことが必要です。

例えば、道の駅だと観光目的に来る人が多く、カラフルな野菜(バラエティー)がよく売れます。直売所では日常的に買い物に来る人が多く、定番品種の方がよく売れます。

私のファーム全体でみると、売れる量は圧倒的に定番品種が多く、7:3ぐらいの比率で売れていますね。

定番とバラエティーをどちらも出すことで、相乗効果で売れることを実感しています。

江守さんの事例(ナス)

―― 江守さんの定番品目はナス。「飛天長」と「千両二号」を栽培しています。

 

「ナスを定番にした理由は、たくさんとれるからです。そして、多くの人が『ナスといえば』をイメージするような、色と形の品種を選びました。」

「飛天長」にラベルを貼る様子
江守さんの農園で収穫したナス

何を作ろうかいろいろ試した中でも、ナスが一番自分の手に合ったということもあります。

新規就農の人は栽培面的にも、果菜類を定番品目にすると反収(面積当たりの売り上げ)につながりやすいです。「飛天長」は栽培方法が難しいわけでもなく、よくとれるし、自分で食べてもおいしいし、お客さんからも好評の品種です。

各地域ごとに、品目ごとの収量/反収が表にまとめられ公表されているので、それを参考に栽培品目を決めるのもよいと思います。

とろけておいしい 「マー坊」
丸い形のイタリアナス
バラエティー品種のラベル

「『マー坊』はとろけるナスなので、調理方法と併せて紹介しやすいよさがあります。

『長緑』は、ヘタも皮も緑で目を引き、中身も実は緑というインパクトが強いです。」

 

変わり種は収量が少ないものが多いイメージですが、「長緑」はたくさん収穫できました。いろいろな品種を出すと、違いを聞かれることが多いので、それぞれの特徴を意識して栽培する品種を選ぶ事が売り上げにつながると思います。品目はこれ!と決めて栽培を続けることで技術が上がるし、品種は自分の好みやニーズに合うものをトライして探していくことが大事ですね。

江守さん栽培のナスはこちら

    何を栽培するか悩んだら・・・

    カタログやオンラインショップで「定番」とうたっている品種から見つけてみるのもおすすめです!

    サカタのタネ おすすめ定番品種 果菜類

      サカタのタネ おすすめ定番品種 マメ、スイートコーン

        サカタのタネ おすすめ定番品種 葉菜類

          サカタのタネ おすすめ定番品種 根菜類

            江守 敦史

            1972年 兵庫県西宮市生まれ。
            いまここランド合同会社 代表
            大手出版社で約20年間のキャリアを積み、株式会社KADOKAWAでは編集長を務めあげる。
            2020年3月11日に農家の課題解決を目指す「いまここランド合同会社」を設立。

            皆さんの定番品目は何ですか?

            オンラインショップユーザーの皆さんの定番品目は何ですか?

            品種を選ぶときのポイントと併せて教えてください。